翌朝――俺は誰かに腕を掴みあげられて、目を覚ました。どうして俺のいる場所がわかったのか、俺の腕を掴みあげている手の持ち主は、厳しい目をしたクソ親父だった。 「こんなところで何をしている」 親父の後ろには、黒塗りのベンツ。 親父の声は、恐ろしいほど冷淡だった。少なくとも、一晩家を空けた息子を心配してここまでやってきたのではないことは確かだった。 しっかりスーツ着て、澄ましたツラしやがって、てめー、夕べは俺の瞬に何してやがったんだよ! 俺は親父の手を振り払い、地べたにへたりこんだままで、そのスカした男を睨みつけた。 「春休みで子供が登校してこないとはいえ、こんなところにでかい図体のガキが転がっていては、人様に迷惑だ」 自分の息子に睨みつけられても、親父は全く動じる気配を見せない。俺がこんなところでごろつきみたいな真似してる理由くらい聞いてきたらどうなんだ。はっきり答えてやるからよ! しかし、親父は理由を聞こうともしなかった。またしても俺の腕を掴みあげ、車の後部座席に叩きこむと、音を立ててドアを閉じる。 そして親父は、運転席にいた島岡に、吐き捨てるように命じた。 「このでかい荷物を家に運んでおけ。私は今日はタクシーを拾って会社に行く」 「かしこまりました」 島岡が車をスタートさせる前に、親父は俺を見もせずに、大通りに向かって歩きだしていた。 脚が長いから、歩くのも速い。 到底四十過ぎの中年男とは思えないご立派な体格の後ろ姿が、無性に俺を苛立たせた。 |