俺は、親父と瞬の死後、十年を一人で生きた。

 その間、人に誇れるような生活をしていたとは、とてもいえない。時の流れは、親父と瞬のことを少しも俺に忘れさせてはくれなかった。

 俺が死んだのは自動車事故で、病院に担ぎこまれた時には既に危篤状態だった。
 死を身近に感じていた数時間、俺は、全身を襲う激痛にうめきながら、ただ一つのことを考えていた。

『瞬、おまえだったらどうだ? 生まれ変われるなら、何に生まれ変わりたい?』
『氷河のお母さん…』

 いいや、違う。親父だ。俺は親父に生まれ変わりたい。
 挫折を知らない人生の勝利者。成功も勝利も愛も、望むもの全てをその手中にし、おまえと共に死んでいった幸福な男。

 親父に生まれ変われさえすれば、俺はおまえをこの腕で抱きしめられる。おまえを俺のものにできるんだ。

 瞬…。俺の一生の――いや、永遠の願いだ。叶えてくれ。

 俺は高生加基臣になりたい――!






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