明日から自分の指揮下に入る子供たちのそんなやりとりを、無言で見詰める目があった。

目は言葉を発することができないのだから、無言でいるのは当然だろう――などという突っ込みは無しにしていただきたい。
日本語を解する人間ならば、『無言の眼差し』という言葉の中に、深い思慮と複雑な感情の存在を読み取ってしかるべきである。

それはともかく、ニコルたちを見詰める者の眼差しに秘められた“深い思慮と複雑な感情”。
それを、極めて端的な、ただの一言で表現するならば、要するに、
『あれが欲しい』
――だった。

見ているだけで腹が立ってきそうなほど幸せそうで、苛立たしいほどにまっすぐな目をした、クルーゼ隊最年少のエース・パイロット。
少女めいて穏やかな明るい色の瞳をしたその少年の素直さが、ラウ・ル・クルーゼは非常に不愉快だった。
そしてまた、非常に好みだったのだ。






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