「アスランの奴、嫌な手を使いやがる」
「いや、あれこそが真のエリートのやり方なのかもしれないぞ」

物陰からアスランの出方を窺っているイザークとディアッカは、もちろん、それがアスランの作り出した嘘八百であり、アスランの言葉はクルーゼの仮面を剥ぎ取るための方便だと決めつけている。
アスランが、自分の作り出した嘘を事実と思い込んで、真面目に真剣に真実を口にしているつもりでいる可能性に、二人は考え及んでいなかった。

そのあたりが、いわゆる“ロボットマンガ”(F監督談)において、主役と脇役とを分ける境界線なのかもしれない。
“ロボットマンガ”の主役級キャラは、自分の中に存在する悪に気付かず、意識しないないもの──気付いた振りをすることはあっても、突き詰めて悩まないもの──なのだ。

「ほんとにもう……どうしてこんなことに夢中になってるんだか……」
覗き見に励んでいるイザークとディアッカの後ろ姿を少々呆れたように見詰めながら、ニコルは小さな溜め息を漏らした。






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