さて、問題の仮面の男ラウ・ル・クルーゼは、ニコルが彼の許に赴いた時、壁に向かってぶつぶつ呟いているアスランを、四次元ポケットから出したとおぼしき木の枝で、ちょんちょん突付いて遊んでいた。

「隊長」
「今度は君か。今日は、入れ代わり立ち代わり何かと忙しい日だな」
ニコルに呼ばれて立ち上がったクルーゼが、呟くように言う。
ぼやくクルーゼに、ニコルは少し申し訳なさそうな顔をした。

「隊長、お願いがあるんですけど」
「うん? オネガイとは何だね?」
「マスクを外して、お顔を見せていただけませんか」
「…………」

実に単刀直入なニコルの“オネガイ”に、クルーゼは一瞬、瞳を見開いた(仮面をつけているため、推測である)。
それから、約2分半、クルーゼは、邪気のないニコルの瞳をじっと見詰めていた(当然、これも推測である)。
ニコルがなぜ急にそんなことを言い出したのか、その理由をクルーゼは判じかねているようだった(説明するまでもなく、推測である)。

そして、だが、沈黙と懸念の2分と30秒後。
仮面の男は、ニコルの“オネガイ”を聞き入れて、実にあっさりとそのマスクを外してしまったのである(これは事実である)。






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