この少年が、“かわいそうな隊長”のために存在しているというのなら、“かわいそうな隊長”は、この少年に奉仕してやる義務もない。
クルーゼは、寝台に放り投げたニコルの身に着けていたものを引き剥ぐと、そのまますぐに彼の中に押し入った。

ニコルが小さな悲鳴をあげる。
痛みは感じるらしい。

(私は、死んだ者と交わっていることになるのか……?)
こんな興味深い経験はそうそうできるものではないと思い、薄く笑う。
そして、クルーゼは更に深くニコルの中を抉った。

ニコルの身体は生きていた。
クルーゼが押し入った部分は、狼藉者を追い出そうとするどころか、逆に自身の中に取り込もうとして、クルーゼに絡みついてくる。
その感覚に酔いそうになって、クルーゼは彼自身をニコルから引き抜いた。

「ああ……!」
ニコルが切なげに身悶える。

驚いたことに、ニコルは、クルーゼが強いた乱暴な交合に、喜悦の表情を浮かべていた。
彼自身が存在する理由である人を、自分の側に──中に──感じられる歓びが、与えられる苦痛を凌駕してしまっているかのように。

そして、クルーゼもまた、ニコルの中に再び踏み入らずにはいられなかった。
その笑顔や、ニコルがまとっているやわらかい空気がそうであるように、ニコルの身体もまた、クルーゼを心地良く包み込む。
母親の胎内にいる子供がこんな感覚の中に浸りきっているのだとすれば、その子供にとって外界は確実に忌むべき場所だろう──そう、クルーゼは思った。

悪魔が人を誘惑する話は、古来からよくある話だが、天使がその肉体で人を惑わす話は、寡聞にして聞いたことがない。
ニコルが天使なのか悪魔なのかはともかくも、それはクルーゼのために在るものだった。
肉体が精神的なものの表現だというのであれば、確かにニコルはクルーゼのすべてを受けとめ抱きしめるために存在していた。

いくら貫いても飽きない。
もう一度交わりたくなる。
いっそ、ニコルの中に取り込まれてしまいたいとさえ、クルーゼは思った。






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