spiritual flower ── phase 03 ──





ニコルの溜め息が、甘い。

それは、蜜のように甘かった。

この世界の不様なありようも、人間というものへの絶望も、恵まれて存在する者たちへの憎悪も、すべて忘れてしまいたくなるほどに、それは甘く優しくクルーゼの肌に絡みついてくる。

その感触を楽しみながら、クルーゼは、
『これは生きているものではないのに──』
と、声には出さず、胸の内で思った。
だが、すぐに、生きているものではないから優しく快いのかもしれないと、思い直す。

その生きていないものは、ひどく優しく温かいものでもあった。






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