spiritual flower ── phase 04 ──





「わからぬさ、誰にも」


──生きている人間は誰もわかってくれなかった。








「これが宿命さだめさ。知りながらも突き進んだ道だろう。正義と信じ、わからぬと逃げ、知らず、聞かず。その果ての終局だ。もはや止める術などない。そして滅ぶ。人は。滅ぶべくしてな」

キラ・ヤマトにそう告げながら、クルーゼは──自身の唇が吐き出す言葉とは別の何かを思っていた。

──人は滅びるものだ。
地球という星も、人という種も、この宇宙さえも、いつかは消える時がくる。
それは、だが、今でなくてもいいのではないか──と。








「それが人だよ。キラ君」

──それ、人ではあるのだろう。


「何が違う。なぜ違う。この憎しみの目と心と、引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界で、何を信じ、なぜ信じる」

──信じずには生きていけないからだ。
人は、何かを信じずには、生きていくことができない。
ラウ・ル・クルーゼが、誰をも、何ものをも信じることができなかったのは、呪われた自分自身に絶望していたからだった。
自分の存在を無意味だと思い、そもそも自分自身はここに存在しているのかと疑った。

そうして、最後に悟ったのだ。
“私”を必要としてくれる者は、この間違った“世界”にはただの一人もいない──と。


「まだ苦しみたいか。いつかは、やがていつかはと。そんな甘い毒に踊らされ、いったいどれほどの時を戦い続けてきた!」

──愚かな人間たち。
実の無い綺麗事だけを並びたて、決して潔く絶望しようとしない浅ましい人間たち。
己れの手を人の血に染め、必死にもがき続ける愚民たちが、そうすることのできる彼等が、どれほど妬ましかったことか──どれほど羨ましかったことか。

「人があまた持つ預言の日だ。それだけの業、重ねてきたのは誰だ。君とて、そのひとつだろうが」


そして、“私”も──。






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