spiritual flower ── last phase ──





「生きて……帰ってきてと言ったのに」

戦場を離れたクルーゼの命を最初に抱きとめてくれたのは、いつも花のようにひっそりとそこに存在していた小さな少年の温もりだった。

死の世界は真の闇でできているものと思っていたのに、そこは、どこか宇宙そらに似ていた。
上もなく下もなく、時間も温度も、そして、戦いのあとの残骸も悲嘆もない。

自分に殺された人間たちが亡者のように漂っているはずだと信じていたその場所で、クルーゼを待っていたのは、ニコルただひとりきりだった。
相変わらず、花のように優しい色の瞳に、涙を浮かべて。


「泣くな」

「答えは見付からなかったんですか。それでも、答えは見付からなかったの…… !? 」

やりきれない結末に身悶えるようにして尋ねてくるニコルに、クルーゼは微笑した。
そして、こんなふうに素直な気持ちで微笑むために費やしてきた、これまでの長い時間を思った。

「見付かったから、ここに来た」
「…………」
「だから、ここに来たんだ、私は」

その人のために“世界”に存在していてほしいと願うほどの“答え”。
その“答え”が存在する場所に。






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