魔人との邂逅V 「大阪の青年と東京のお嬢様」

明けて月曜日の朝。

その頃、みずは様は大阪に帰り損ねた挙句に風邪をひいてしまい、ユタ州様宅において大変なことになっていたようですが、なにも知らない私は前日の心地よい気分のまま派遣先の某企業に向かっていたところ、とある女性に声をかけられました。

「おはようございます、溝口さん。」

振り向くと、派遣先の女性社員Yさんでした。

父親が某企業の元重役で有名なお嬢様学校出身という所謂「高嶺の花」ですが、それを鼻にかけることもなく仕事もバリバリこなし、さらに最近ご結婚された為か落ち着いた物腰の中にも清楚な艶をお持ちの、官能小説で大活躍しそうなお嬢様です。

わずか10分程の道程ですが、Yさんとおしゃべりしながら会社へと向かいました。
それだけで気分が高揚してゆく自分の判りやすさがちと何ですが、やはりお嬢様は良いということで、ひとつ。



「ところで溝口さん、昨日の午後、XXXでお見かけしたのですが・・・」

なにいっ!?
XXXって・・・まさかコスプレ専門店に入るところを見られたのか!?
口を塞がなくては。

「お連れの方がご一緒でしたのでお声はおかけしなかったのですが、どちらかに向かわれるところだったのですか?」

・・・どうやら道を歩いているところを見られただけらしく、口を塞ぐ必要はなさそうです。残念。

「実は大阪から知人が上京してきまして、同行していたのです。」

「そうでしたか、どのようなところを回られたのですか?」

言えません。
というか何故そんなに知りたがるのですか、お嬢様。そんなところも官能小説のヒロインっぽくてGOODですが。

「ええ、主にファッション関係のお店を色々と回りまして。」

「もしかしてファッション関係のお仕事をされている方なのですか?」

「いえ、もともとそちらの方に深い知識と嗜好をもっていた方なのですが、今後は趣味のレベルを超えてその方向に進むおつもりらしく、上京がてら勉強ということで。」

「やはりプロを目指される方は違うのですね。」



みずは様、遠く東京の地でひとりのお嬢様がファッション関係のプロを目指す青年の応援をしています。貴方なら第一人者になれるはずです。頑張って下さい(超遠い目)。


                         −完−


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