8月の焚木(前)      △戻る  ▲TOP

  01/08/14(火)   正直者

「おはようございます!」

フロア中に響くあいさつは、隣の課のいつも元気な新人N君。

裏表のない性格とハキハキした態度、どんな些細な仕事でも進んで引き受ける姿勢、そしてちょっと間抜けなところが受けて人気者です。

宴会でも率先して盛り上げるタイプで、さらに実家がおもちゃ屋さんという彼は宴会に色々と小道具を持ってきてくれます。

でも、いくら自分の親の店だからって、商品のおもちゃを勝手に持ち出すのは良くないぞ(汗)
あとでそれと知って慌てた上役が払ったおもちゃ代はビールに化けて部下達の胃袋に納まったのは極秘の方向で。



その日の朝も、いつも通りフロア中に響く大声で挨拶をした彼は、自席にカバンを置くと、まっすぐにW課長のもとに向かいました。

隣の課を統べる、三十代後半のW課長。
仕事には厳しいけれど、ことし小学校に上がった娘さんのことになるといきなり馬鹿親父に変身して相好をくずす、とてもわかりやすい性格をした仕事も家庭も大切にされている彼も、N君のことはお気に入りです。

まあ、あからさまな贔屓をするような方ではありませんが、N君とはよく世間話なんかもしていますから、きっと気が合うのでしょう。

とはいえN君、朝っぱらからW課長に何の用が?

「課長!」

「おう、おはよう。」

「頼まれていたリカちゃん人形もってきました!」








N君、冬のボーナスをお楽しみに


  01/08/12(日)   お年頃

結局、今回もコミケには行けませんでした。

いえ、時間的に無理をすれば行けないことはなかったのですが、新システムへの移行という大仕事を控えていたので体力的な面から断念しました。仕事に支障が出てはお話になりません。

もっとも、移行作業そのものはSEさんたちが実施するので、プロジェクトリーダーの先輩とサブリーダーの私は椅子に座ってふんぞり返り、時々進行状況を確認するだけでしたから楽ちん・・・・・・責任者にはいざというとき責任を取るという大事な仕事があります。


東急ハンズで買ったジャイアント・アフロは使用しないまま夏を終えそうです。

せっかく買ったのに何処にしまおうか、とアフロを手に持って自室で思案していたら、急に母が部屋に!あわわわわわわ

「夕飯できて・・・・・・なに、それ?」

「あ、え、えーとお祭りで使うはずだったんだけど行けなくて、しまおうかと・・・」

「年を考えなさいね。」

それは言わない約束でしょう、おっかさん(涙)






・・・というか、ちっとも驚かないのは何故!?(泣)


  01/08/11(土)   未知への挑戦

秋葉原に出撃したとき、私は某量販店のマッサージチェア売り場で休憩することにしています。

いや、これがなかなか快適で、座り心地がよく角度調節も自在なシートで全身マッサージを受けながら1時間も過ごすと、再び「虎の穴」に出撃する気力も沸いてきます(ダメ中年)。

最近は足を揉み解す機能の付いたものも多く、歩き疲れた足もばっちり回復。至福の一時。



ちょっと前のことですが、某社の新作が出ていたので試してみました。
何か間違っているような気もしますが、この際、それは考えないことにします。

ふむ、わりとオーソドックスなタイプだけど、ゆったりとした座り心地で頭のあたる部分の形もいいね。違和感がない。足を伸ばせるうえに揉み解す機能も付いているし、いい仕事してるな。

さて、肝心のマッサージ機能は・・・大きく分けて全身マッサージ、部分マッサージ、それと軽いマッサージの3コースですか。これまたオーソドックスだけど変な機能がついてるよりはマシだよね。

軽いマッサージのコースを試してみよう。内訳はどんなのかな・・・。
えーと、

おはようコース
おやすみコース
おしりコース


なるほど。








ちょっと待て。

なんだ、おしりコースって。
一日中椅子に座りっぱなしでおしりが圧迫されていることが多い現代人の為に、おしりの疲れを揉み解す機能なのか!?

この会社、確かに全国的に名を知られてるわけじゃないけど、マッサージチェアでは実績のあるところだぞ?何考えてるんだ一体。

・・・肩たたき機能のようにドドドドドッと下から突き上げるように叩かれるのだろうか。それとも、揉み解し機能でグリグリされるのだろうか。あるいは軽い振動がウィィィィィィィィンッとこう

スイッチオ



・・・見られてる。なんだ、あの女性店員。こっちをちらちら盗み見してるぞ。

・・・おしりコースか!?
このマッサージチェアにおしりコースがあるのを知ってて私が好奇心に負けて使うかどうか見てやがるな!(被害妄想)

く、危ないところだった。危うくあんな若い娘に視姦されながらおしりを揉み解されて恍惚の表情を浮かべてしまうところだったいいじゃないですかそれ

スイッチオン!



グリングリングリングリン

・・・なんだ、最初は肩の揉み解しから始まるのか。で、背中を揉み解しつつゆっくりと下に来る、と。そうだよな。これならおしりを揉み解されるにしても心の準備ができ


ウィィィィィィィィンッ

ああっ!?そ、そんないきなり!!
油断してたら急に軽い振動がおしりにっ!おしりにっ!
あううっ!?振動がボールとバットに伝わるぅ!!


ドドドドドドドドドドッ

はあぅっ!?
軽い振動はそのままに下から突き上げるように叩かれるとは!!
くはあっ!?振動に加えて上下運動までもがボールとバットにっ!!ボールとバットにっ!!


グリングリングリングリン

のおおおおおおおおおおおおおおおっ!?
肩から始まった揉み解しがおしりに!!
3種類の動きが同時におしりにっ!!ボールとバットにも未知の感覚がっ!!


いっ、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!


ウィィィィィィィィンッ ドドドドドドドドドドッ グリングリングリングリン
ウィィィィィィィィンッ ドドドドドドドドドドッ グリングリングリングリン
ウィィィィィィィィンッ ドドドドドドドドドドッ グリングリングリングリン
ウィィィィィィィィンッ ドドドドドドドドドドッ グリングリングリングリン
ウィィィィィィィィンッ ドドドドドドドドドドッ グリングリングリングリン
ウィィィィィィィィンッ ドドドドドドドドドドッ グリングリングリングリン











断言します。おしりコース開発者、絶対に狙ってやってます。

以後、ここで休憩するとは必ずこれに座ることに決めてます。


  01/08/09(木)   秘密の花園

まだ入社して数年目、二十代半ばの頃の事です。

某企業の情報処理センターの心臓部であるコンピューターフロアに入る機会を得た私は、思い切り緊張して入口の前に立っていました。

あまり詳しくは書けませんが、ここに辿り着くまでに既に3回チェックを受け、本人確認をされパーソナルデータを取られたうえ持ち物も検査されました。変なものを持ってなくてよかった・・・。

コンピューターフロアの入口は大金庫のような分厚い鉄の扉で、「北斗の拳」に出てきそうな屈強なガードマンが二人、じろりと睨みを効かせ、おまけに空港の手荷物検査でくぐるようなゲートまで付いています。

「入室に際しては、金属類は全て一旦身体から外してこちらに渡してください。チェックが済みましたらお返しします。」

まじですか。

ゲートを無事くぐった私は、ガードマンから入室用の胸章を渡されました。

「入室中は絶対に外さないで下さい。侵入者とみなされますので。」

・・・室内はガードマンだらけで、胸章を付けていないと即座に取り押さえられてしまうのだろうか。
いや、きっとセンサーがあちこちに設置されていて、胸章を所持していない熱源が移動していたら、その場でレーザーが放たれ射殺されてしまうんだ。きっとそうだ。

「では、どうぞ。」

果たして生きて出られるのだろうか・・・半分本気でそう思いつつ、私は入室しました。



体育館が数個入ってしまうような広さのフロアには大型汎用機や小型サーバーが百台以上(?)据え付けられ、大型冷却装置が数十台フル稼働でこれを冷やしており、背広を着ていても寒いくらいです。

オペレーターさんが多数働いているのに対しガードマンは数えるほどで、レーザー装置もなさそうでしたが、監視カメラがあらゆるところに設置されており、まさに死角なし。

「ようこそ、溝口さん。」

見知った顔の男性が近づいてきたとき、ようやく私はほっとしました。
センターの職員で三十代半ばのKさんです。

彼の後について私はコンピューターフロアの一角にある事務室にやって来ました。
ここでは電気ポットでコーヒーなんかも飲めるとのこと。

やれやれ、おじゃましま

きゃははっ、きゃーっ、きゃはははははっ!

・・・目の錯覚でしょうか?

園児と思しき小さな女の子が別の職員さんとジャンケンをしながら笑っているのですが。

「あの・・・Kさん、この子は・・・」

「はは、うちの娘でして。妻が急に入院してしまって・・・明日には田舎から母が出て来てくれることになっているのだけど、今日は日曜で幼稚園もお休みだし、仕方ないから連れて来たんですよ。」

それは大変でしたね、っていいんですか連れて来たりして。

よく見ればちゃんと胸章も付けています。
ガードマンさん、この子にも「入室中は絶対に外さないで下さい〜」と説明したのでしょうか。
とりあえず私なら自分の手でこの子に付けてあげます。



父親であるKさんの姿を見つけたその子は、一目散に彼の下にやって来ると、しばらくKさんにあやされていましたが、ふと私に目を留め小さなこぶしを突き出してきました。

な、なに?

「ああ、こいつ最近ジャンケンがお気に入りで。溝口さんとジャンケンをしたいんでしょう。」

そ、そうですか。じゃあせっかくですから・・・


ジャンケンポンッ!

  溝口:パー  △ − △ パー:女の子

きゃはははははっ!


あいこでしょっ!

  溝口:チョキ × − ○ グー:女の子

きゃはははははっ!


ジャンケンポンッ!

  溝口:パー  ○ − × グー:女の子

きゃはははははっ!



・・・知るまい。

世間の人は、某企業の情報処理センターの心臓部であるコンピューターフロア、厳重な守りに固められたその最深部で、二十代半ばのサラリーマンと幼稚園児の女の子がジャンケンをしているなどと・・・知るまい。(知るかい)


  01/08/07(火)   未来は子供たちの手の中に

帰宅途中、とある駅のホームにて、電車の到着を告げるアナウンスが流れてきました。

「まもなく各駅停車XX行きが到着いたします。」

すると、小さな男の子が母親らしき人に尋ねました。


「おかあさん、かくへいきていしってなあに?」






・・・ぼうず、大きくなったら頼むぞ(頼むな)


  01/08/05(日)   闇に蠢くもの

今までに私が経験した最も過酷なプロジェクトは、某大企業が我が社を含む数十社から数百人のシステムエンジニア、プログラマーを集めて行ったものです。

当時は、百人以上が某大企業に一週間以上泊まり込んだり、睡眠時間が週に十数時間という日々が数ヶ月続いたりと無茶苦茶な状態で、数百人が常に精神的にハイな状態だったという ネタの宝庫 異常な雰囲気の職場でした。

中には過労で倒れたり、入院したりと、ネタでは済まないことになってしまった方もおり、我が社もこのプロジェクトに派遣していた社員の健康管理には特に気をつけたようです。



当時このプロジェクトでご一緒していた、四十代前半のシステムエンジニア、Aさん。

某社から我が社を通じてプロジェクトに参加されていた彼は、とある分野の専門家として極めて有能、加えてお人柄も良い方でしたが、なんというか見た目が小錦を一回り小さくしたような壮絶な肥満体で、しかも大酒のみのヘビースモーカー
年中顔を真っ赤にしており、いつ心臓発作や脳溢血で倒れてもおかしくないと会社が健康管理面でブラックリストに上げていましたが、それも無理はありませんでした。

私も、Aさんについては健康面で問題がないか特に注意して観察していました。
なにか監視しているようで抵抗があったのは確かですが、本当に心臓発作や脳溢血で倒れられるよりは遥かにましです。
Aさんには小さなお子さんが二人いらっしゃることも知っていましたので。



プロジェクトが佳境を迎えていたある日の夜。・・・いや、年中佳境だったような気もするのですが、とりあえずそれは置いておくとして、プロジェクトが佳境を迎えていたある日の夜。

少し仮眠でも取ろうと休憩室に入った私は、暗闇に目が慣れるまでしばらく戸口で佇んでいましたが、何やら変な声が聞こえてくるのに気が付きました。

ううっ・・・う・・・ううう・・・うっううーっ

何だ?・・・唸り声?

やがて暗闇に目が慣れた私は、窓から差しこむ月明かりに照らし出された光景を見てギョッとしました。

休憩室のソファーの上で何人かの同僚が仮眠を取っていたのですが、さらにその向こう、休憩室の隅で、誰かがこちらに背中を向けた状態であぐらをかき、上体が前のめりになったまま苦しそうに唸っていたのです。

あの小錦のような後姿・・・Aさんか?何を唸って・・・まさか!?

「Aさん?どうされました?・・・Aさん?・・・Aさん!?どうされました!?Aさん!!












ほどけた靴紐を結んでいらっしゃいました。

椅子に座った状態や、片ひざをついた状態では、お腹の肉が邪魔で手が靴に届かないのだそうです。

うかつでした。私もそうなのに。


  01/08/04(土)   重い十字架を背負って

現在、サブリーダーとして関わっているとあるプロジェクト。

新システムへの移行を間近に控え、リーダーを務める先輩社員とユーザーの所へ詰めの打ち合わせに行ってきました。

自画自賛になりますがなかなか良い出来栄えで、ユーザーさんは今までの数倍の効率で業務を進めることが出来る筈です。ユーザーさんの代表の方も喜んでくれました。
まあ、稼動したら当面はトラブルが出たりするでしょうから、喜ぶには早いのですが。

打ち合わせが終って会社に戻る電車の中。
上手く席を取った私たちは、ほっと一息つくとしばらく黙って座っていました。
と、不意に先輩がつぶやきました。

「俺たち、人減らしの為の仕事してるんだよな。」

私は、ユーザーさんのところで何度か見た光景を思い出しました。
現行システムで作業されている大勢のオペレーターさんたち。その半数以上は、新システムが稼動すれば必要なくなるのです。配置転換か、あるいは・・・。

すう、す・・・う

なんと答えたものかと先輩の方をちらりと見ると、目を閉じ寝息を立て始めていました。

お疲れ様です、先輩。

最寄駅についたら起こしますから、今はゆっくりお休みください。

まだまだ忙しいのですから。










「やっと会社に戻ってこれた。もうこんな時間だよ。」

「・・・・・・・・・・」

「まったく、二人して居眠りして乗り過ごしちまうとは間抜けだよな。」

「・・・そ、そうですね。」

ほら、私も疲れが溜まっていたもので(へどもど)


  01/08/03(金)   まだ諦めてはいません

「やはり、新システム移行当日にサブリーダーの君が居ないというのは・・・」

「・・・・・・・・・・」

「チームのメンバーやユーザーも不安に思うだろうし・・・」

「・・・・・・・・・・」

「どうしても外せない用事という事なら別だが、できれば・・・」

「いえ、どうしてもという訳ではありませんので。我侭を言って申し訳ございませんでした。」

「そうか、すまないね。」










ふう、やっぱり駄目だったか。今年こそはと思ったのに。

せっかく買ったのに無駄になっちゃうかな。




















コミケカタログと




















アフロ しかも「ジャイアント・アフロ」


  01/08/01(水)   技術の東芝

目が覚めたとき、まもなく会社の最寄駅に到着するというアナウンスが車内に流れていました。



ちょっと情けない話ですが、ここのところ出勤・帰宅の電車内ではずっと寝ています。

以前は通勤時間を読書や資格試験の勉強に充てていたものですが、最近はどうも疲れが出てしまうのか集中できません。
東京のサラリーマンとしては幸運なことに、通勤電車では大抵席に座れるので、最寄駅の一つ、二つ前辺りまで居眠り状態です。
時々、見知らぬ駅で目が覚めることも。

・・・年々中年サラリーマン化してるな、私。(窓の外を流れるトンネルの暗闇を見つめながら)



今日も今日とて居眠りをしていたのですが、危うく最寄駅を通り過ぎてしまうところでした。
私はあわてて胸ポケットからメガネを取り出すと掛けて・・・

メガネが無い!?

居眠りの際、メガネを外して胸ポケットにしまっているのですが、それがありません。

以前、居眠り中に胸ポケットからメガネが落ちて他の乗客に踏まれた経験があったので、私は大慌てで床を探し始めました。

「どうしました?」

初老のサラリーマンが聞いてきました。

「あ、実はメガネを落としてしまって・・・」

すると彼は首を傾げて言いました。

「いま掛けているのとは別のですか?」










おさかなくわえたドラ猫 追っかけて

はだしでかけてく 陽気なサ○エさん

みんなが笑ってるー お日さまも笑ってるー

ルールルルルッルー 今日もいい天気ー



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