「おはようございます!」
フロア中に響くあいさつは、隣の課のいつも元気な新人N君。
裏表のない性格とハキハキした態度、どんな些細な仕事でも進んで引き受ける姿勢、そしてちょっと間抜けなところが受けて人気者です。
宴会でも率先して盛り上げるタイプで、さらに実家がおもちゃ屋さんという彼は宴会に色々と小道具を持ってきてくれます。
でも、いくら自分の親の店だからって、商品のおもちゃを勝手に持ち出すのは良くないぞ(汗)
あとでそれと知って慌てた上役が払ったおもちゃ代はビールに化けて部下達の胃袋に納まったのは極秘の方向で。
その日の朝も、いつも通りフロア中に響く大声で挨拶をした彼は、自席にカバンを置くと、まっすぐにW課長のもとに向かいました。
隣の課を統べる、三十代後半のW課長。
仕事には厳しいけれど、ことし小学校に上がった娘さんのことになるといきなり馬鹿親父に変身して相好をくずす、とてもわかりやすい性格をした仕事も家庭も大切にされている彼も、N君のことはお気に入りです。
まあ、あからさまな贔屓をするような方ではありませんが、N君とはよく世間話なんかもしていますから、きっと気が合うのでしょう。
とはいえN君、朝っぱらからW課長に何の用が?
「課長!」
「おう、おはよう。」
「頼まれていたリカちゃん人形もってきました!」
N君、冬のボーナスをお楽しみに。
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