私は普通の子供好きです。
休日出勤帰りの夕方の電車。
私の席の向かいに親子連れ三人が座っていました。
親子で遊びに出たのでしょう。
右手にヨーヨー、左手に風船を持った小さな男の子はまだまだ元気一杯で、しきりと両親に話し掛けていました。
けれどお母さんはぐっすり。お父さんもうとうとしています。
男の子は両親に話し掛けるのを止め、まわりをキョロキョロと見回すと、私に目を留めにっこり笑いました。
そして右手のヨーヨーを私に向けて突き出し、左手を曲げたり伸ばしたりしながら「えいっ、えいっ」と言い始めたのです。
良く分かりませんが、ヒーローごっこをしており、私を怪獣か何かに見立てて必殺技でも放っているのでしょう。
せっかくですから私も怪獣になってあげることにして、男の子が「えいっ」と言うたびに悶え苦しむポーズを取ってあげました。
男の子は大喜び。
夕日の差す車内。向かい合った席でしばらくヒーローごっこを楽しみました。
やがて、お父さんが目を覚まし、はしゃぐ息子を見て、そして悶え苦しむ私を見ました。
違うんです。
私は普通の子供好き、ただの気の良いおっさんなんです。
お願いですから鬼のような形相で睨み付け、寝てるお母さんを起こした挙げ句、息子さんをかばうようにして車両を移動しないで下さい。
一部始終を見ていたお爺さんが気の毒そうに言ってくれました。
「警察には私が話してあげるから」
いや、そうじゃなくて(泣)
追伸:警察はきませんでした。
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