星矢と紫龍が我にかえったのは、瞬を抱いた氷河の姿が長い廊下のどこにも見えなくなってからだった。

「し…紫龍……」
「なんだ」
「あー、今のって、あれだろ? お姫様抱っこって奴」
「のようだな」

「びっくりした……。初めて見た……」

星矢の驚愕もどこか的が外れていたが、紫龍は星矢の気持ちがわからないでもなかった。
根本的な部分に、触れたくないのである、星矢は。



「明日の朝まで……って、今日はまだ始まったばっかなんだけど」
「俺も起床してから1時間しか活動していない」

あくまで星矢は、論点をずらそうとする。

「瞬、大丈夫かな」

紫龍も、事ここに至って根本を語ることの愚は理解していた。

「死ぬことはあるまい。仮にも聖闘士だ」
「う…うん、そーだよな」



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氷河は本当に翌朝まで、食事のためにすら部屋を出てこなかった。






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