9月の焚木(前)      △戻る  ▲TOP

  01/09/13(木)   谷岡ヤスジ

月曜、火曜と、私の住む関東某所は台風15号の影響で激しい雨風に見舞われました。

特に月曜日は、ちょうど出勤時間帯に横殴りの豪雨が襲い、駅から会社までのわずか徒歩10分でずぶ濡れになってしまいました。傘で守れたのは辛うじて肩から上のみ。

同僚たちもご同様で、皆えらい格好で次々と出勤してきます。

こんな日は、南の島のハメハメハ大王の子供たちのように、風が吹いたら遅刻して雨が降ったらお休みで、といきたいものですが、当然の事ながら社畜にそんな権利はありません。

もっとも、スーツを脱いでしまえば上半身は殆ど無事。後はズボンと靴・靴下の問題ですから、気になる社員は代えの靴下に履き替えたり、靴を脱いでサンダルに履き替えたりしてお仕事モードにチェンジ。こうしてみると、確かにスーツはサラリーマンの鎧ですな。



「おはようございます。」

始業時間ぎりぎりになって、新人女性社員Mさんが出勤して来ましうわっ、びしょ濡れ

髪の毛からは水滴がぽたぽたと落ち、服もカバンもびっしょりで、まさに濡れ鼠。折り畳みの傘は見事におちょこになってしまっています。

強風の日に折り畳みの傘という選択自体間違っていますが、過去にこうした経験がある女性社員は頑丈な傘に加えてレインコートで武装して来るところ、新人のMさんはそこまで気が回らなかったようです。

しかもスーツのような厚手の上着も着ていません。まだ蒸し暑いから上着を着たくないのは分かりますが、如何にも新人さんらしい失敗です。

というか、それ以前の問題として、何故こんな日に白い薄手のブラウスを着て来ますか、Mさん。

雨に濡れて透け透けなんですけど。

男としては嬉しいですよ。嬉しいですが、はっきり言って目のやり場に困ります。下手に凝視などしたらセクハラ扱いされかねませんし。
あああ、私以外の男性陣も困ってる、困ってる。

「Mさん、風邪ひくと不味いからどこかで乾かしてきなよ。」

流石に透け透けとは言えません。というか、自分で気付いてくれよ、Mさん。

「けれどもうすぐ始業時間ですし・・・」

真面目なのは良いけど、そんな格好でウロチョロされたら男性陣が仕事にならないっつーの。

私の課にはMさんを含めて女性社員は三人居ますが、こんなときに限って一人は休暇、もう一人は電車が止まって遅れると連絡が入っています。課長も席を外しているし・・・。



「Mさん、更衣室で乾かしてきなさい。」

いっそこのまま どうしたものかと思っていると、年長の女性社員Gさんが声をかけてきました。

「あ、はい。でも始業時間が・・・」

「朝一で上げる仕事は?無い?ならいいわ。課長さんには私が言っておくから。」

「わかりました。ありがとうございます。」

Gさんは、私達とは別の課の所属ですが、社内でも強い発言力をお持ちの女性として知られています。特に女性陣の扱いについては、セクハラ対策ということもあるのでしょうが、課長や部長よりもGさんの意見が優先されることがままあるほどです。
もちろん、それに相応しいだけの人格と、仕事での実績をお持ちであればこそ、ですが。

そんなGさんに勧められたMさんは、ようやく更衣室へ服を乾かしに行くことにしました。
嗚呼、透け透けブラウスよ、さようなら。 お手数をおかけしました、Gさん。



Mさんが「ちょっと失礼します」と言いながら、私の席の後ろを通りかかりました。彼女の髪からはまだ水滴がポタポタと落ちています。

と、そのとき。

ポタッ

「うわっ!?」

私の机の上の書類に水滴がかかりました。

「あっ、ごめんなさい、溝口さん。水滴がかかっ・・・て・・・?」

書類に真っ赤な水滴が落ちていました。

・・・真っ赤?

私の真向かいの先輩社員が、私の顔をまじまじと見つめながら言いました。

「溝口、お前、鼻血でてる。」

うおっ、何か生暖かいと思ったら鼻血かよ。
あっ、また垂れた。あーあ、書類書き直しだな、こりゃ。
えーと、ティッシュ、ティッシュ・・・

・・・・・・・・・・?

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・!!

ち、違う!!偶然です、偶然!!

ちょっと先輩!何をニヤニヤしているんですか!!

ああっGさん!?そんな怖い顔をしないで下さい!!

Mさーん!困ったような顔をしーなーいーでーっ!!

・・・もしかして、ようやく自分の服の状態に気付いたんですか!?よりによってこんな事で!?

「あの・・・失礼します・・・」

だ、だから違う・・・(泣)






結局、午前中はこの話題で散々からかわれてしまいました。
幸いなことに、GさんもMさんも偶然として認識してくれましたが・・・。

お昼休み、私はいつもの休憩室ではなく、別の階の休憩室にエレベーターで向かいました。
いつもの所では、またからかわれるに決まっているからです。

と、途中でエレベーターが止まり、専務が乗り込んできました。

「おう、溝口君、雨に透けたブラウス姿に興奮して鼻血を吹いたって、本当かい?」

だ、だから違・・・(泣)


  01/09/13(水)   黙祷

アメリカの同時多発テロでは、戦争、天災レベルの犠牲者が出たようです。

私の直接の知人は無事でしたが、取引先の関係者を含め大勢の方が行方不明のままで、安否が気遣われます。

経済への打撃も深刻で、短期的、長期的に様々な影響が出ることは避けられないでしょう。
私自身の仕事にも影響が出て来そうな情勢です。(というか、既に出て来ている。)


今日は、週初の台風で「本日の焚木」を書きましたが、さすがにUPする気になれません。
「一人でも一万人でも犠牲者に変わりない」し、「アメリカ以外の国で、昨日も今日も、そして明日も、一般市民が犠牲になっている」し、「テロリズムに走らせた背景がある」し、「心配するのは我が身にも降りかかりそうだから」だというのは良く分かっていますが。

UPは明日に延期させて頂きます。ご了承下さい。


今はただ黙祷し、自分の属する場所で最善を尽くす決意を固めるのみです。


  01/09/10(月)   暗鬼

中国自動車道少女放置死事件の犯人が捕まりました。
犯人は34歳、私とほぼ同年代の中学校教師だそうで、最初から拉致目的だったようです。

酷い話です。

改めて被害者のご冥福をお祈りします。



「かわいそうにねえ。」

ニュースでの報道を見ていた母がぽつりと言いました。

「ん。」

こうした報道がある度に暗い気持ちになりますが、今回のように被害者が子供だと余計に居た堪れません。

「あんたは大丈夫でしょうね。」

「うん。」
















それは一体どういう意味ですか、母上(爆涙)
一体どこまでバレているのか。


  01/09/09(日)   黒い家

出張のときを別にして、初めて更新が三日ストップしてしまいました。
無駄足を踏ませてしまい申し訳ございません。
仕事は確かに忙しかったのですが・・・・・・。

実は、警察のご厄介になってました。



ちょっと待ってください。違います。
違いますから「絶縁状」を書き始めないで下さい。

言い方が悪かったですね。

実は、自宅に警察の捜査が入りました。



ちょっと待ってください。違います。
違いますか(以下略)



先日、会社から帰宅した私を、青ざめた顔をした両親が出迎えました。
なんと、預金通帳と印鑑を全て盗まれた、というのです。

私も一瞬で全身から血の気が引きました。

両親は自営業で、夜半まで一階の店舗で働いているのですが、店を閉めて二階に上がろうとしたら鍵をかけていたはずの裏口が開いており、不安になった母が重要なものを隠してある戸棚を確認したところ、通帳と印鑑をしまっているカバンがなくなっていたそうです。
このカバンには通帳と印鑑以外にも重要な物が色々と入っており、悪用されでもしたらかなり大変なことになります。

とりあえず、各金融機関、そして警察へ連絡です。


警察を呼ぶとき、両親は一瞬、躊躇しました。
自宅があまりにも散らかってて汚いからです。
客間を除いて、本当に散らかっています。

こんな時にとお考えでしょうが、私だって自分の部屋に警察が捜査に入るなんて想像しただけで死にたくなります。
お巡りさん達にエロ同人とかエロゲを見られたら(しかも箱単位で)。中には「ガッツ」とか「炎多留」とかいやああああああああああ(泣)
まして、やって来た警官が学生時代にバイトしていた塾のもと教え子だったり、もと教え子の父兄だったりいやああああああああああああああああああああ(泣)

とはいえ、やはり呼ばないわけにはいきません。まあ、私の部屋に捜査が入ることもないでしょう(希望的観測)。


電話をしてから僅か15分ほどで、お巡りさんと私服の刑事らしき方がやって来ました。
母は「ちらかっててお恥ずかしいですが」とか言いながら彼等を二階に案内し、父が刑事さんに事情を話しました。
鋭い目つきで部屋を見渡しながら真剣な面持ちで父の話に耳を傾ける刑事さん。
母は、そして私もそうだったのだと思いますが、不安そうにその様子を見つめていました。

ところが、父から話を聞いた刑事さんは、何も調べず即座に仰いました。

「おそらく、空き巣とかではありませんね。」

きょとん面をかましている両親と私に背を向け、刑事さんは問題の戸棚に近づきました。

「ちょっと失礼しますよ。」

刑事さんは戸棚の中と周辺を探っていましたが、程なく戸棚の裏から何やら引っ張り出しました。

「これではないですか?」

なんと、それは盗まれたと思っていたカバンでした。

大山鳴動、鼠一匹

刑事さんは「よくあることですよ」と笑っていましたが、両親はひたすら恐縮して謝ってました。
同情の余地無し。

それにしても、空き巣ではないと、何故一発でわかったのでしょうか。

「ああ、それはですね。空き巣というのは短時間で仕事を済ませるのが普通です。」

ふむふむ。

「ですから、ここまで散らかっている部屋は敬遠するんですよ。」








この土日は大掃除でした。

「完璧な空き巣対策が施された部屋だと警察のお墨付きをもらったのだから、わざわざ片付けなくても良いではないか。」
という私の意見は、掃除の鬼となった両親に即、却下されたのは言うまでもありません。


  01/09/05(水)   天地鳴動

会社には様々な考え方を持った様々な年齢層の人が集まりますから、当然、軋轢も生じます。
もちろん、仕事の上でお互いの意見をぶつけ合うのは必要だし大切な事です。しかし、個人的な感情が混じりエスカレートすると、後々までしこりを残してしまいます。


とある会議の席で、社内でも犬猿の仲として有名な、N課長とY課長が同席しました。

まあ、犬猿の仲とはいえ仮にも課長として大勢の部下を任されているお二人です。少なくとも仕事の上では、個人的感情から諍いを起こし部下や上層部を困らせるようなことはありませんでした。

しかし、その日は少し様子が違っていました。

当時、我々が担当していたプロジェクトはトラブルが頻発しており、両課長を含めた担当者たちは徹夜や休日出勤の繰り返しで疲れきっていました。
そこへもって新たにトラブルが発生し、その対応のために召集されたのがこの会議だったのですが、そのトラブルというのがN課長のチームとY課長のチームの連絡不備から生じたものだったのです。

会議は冒頭から不穏な空気に包まれていました。

N課長 「困りますね、ルールをきちんと守って頂かないと。」

Y課長 「そのルールの報知が期限間際ではこちらとて混乱しますよ。」

両課長、いつもと違って明らかに語気が荒い。
まずい。あまりエスカレートしないうちに会議の主催者が押さえにまわらないとって主催者は私なんですけど(泣)

もうお昼休みに入ってしまっています。皆も疲れきった顔をしているし、さっきから腹ぺこだし(それが本音か)、とっとと会議を終らせないと。

仕方ない。私は覚悟を決め、押さえに入りました。

溝口  「お二人とも・・・」

ぐうぅううぅぅぅぅぅぅぅっ

N課長 「・・・・・・・・・・・・」

Y課長 「・・・・・・・・・・・・」

出席者「・・・・・・・・・・・・」

溝口  「・・・・・・・・・もう少し落ち着いてください。」

N課長 「・・・・・・・・・うん、まあこちらも悪かったし。」

Y課長 「・・・・・・・・・いえ、こちらにも非がありますし。」


こうして私の腹の音で両課長は冷静さを取り戻し、会議は無事、終了しました。




















お願いです。どなたか私を誉めてください(泣)

会社の皆は一言も触れようとしないんです(涙)。


  01/09/03(月)   雨の夜空に

夜の駅。

くたびれた背広姿のおじさんが一人、手すりにもたれてぼんやりと雨宿りをしていました。

不意におじさんはカバンを開け、何やら取り出すと、雨に向かって吹き始めました。



シャボン玉を。



ゆらゆらと漂いながら、雨に打たれはじけて消えてゆくシャボン玉。

一向に止む気配を見せない雨に向けて、おじさんは石鹸水がなくなるまでひたすらシャボン玉を吹きつづけました。

・・・もう、夏も終わりですね (おじさんと一緒にシャボン玉を見つめながら)




















というか、思い詰めないで下さいね、おじさん。

お願いですから (T_T)


  01/09/01(土)   北の国から

前回更新だと、出張先で仕事をサボって遊びまくっていたかのような溝口ですが、その通りそんなことはありません。
もともと出張は四日間だけだったのですが、せっかく北の大地へ行くのだからと、二日間夏休みをくっつけたというのが真相です。



北の大地へは去年も行ったのですが、今年はちょうどこの期間に香港転勤中の馬狂い同期S本が夏休みを取ってやってくるので、有名な競走馬の居る牧場を案内してもらうことにしました。
有名な競走馬の見学については牧場ごとに見学時間や見学ルールが厳格に定められているので、何度も見学しているS本の案内があれば安心です。

北の大地であちこち周るには車が必須。レンタカーを借り、S本を運転手として、私に同僚二人を加えた計4人が乗りこみ出発です。

残念なことにちょっと小雨がぱらついていましたが、S本の上手な運転もあってドライブは快適に進み、数時間後には牧場が集中している地方にやって来ました。

広大な牧場でサラブレッドたちがのんびりと草を食んでいる様子はなかなかに心が和みます。特に馬狂いのS本は早くも興奮気味で、車の運転をしながらちらちらと窓の外の馬たちに目をやり、しきりに「いいなぁ」と言っています。
おいおい、馬に気をとられて事故らないでくれよ、S本。

「あっ!子馬だ!!」

いきなり悲鳴のような叫びを上げるS本。驚きながらも車の窓から外を見ると、一頭の子馬が母親らしき馬の周りを元気に飛び跳ねていました。
うんうん、人間でも動物でも子供は可愛い

「かかかかかかかかかかか可愛いなあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

S本大興奮

わかったわかった、確かに可愛いからちょっと落ち着け、ってハンドルから手を離すなこの馬鹿!うわっ!?前見ろ、前!!たたた対向車があぁっ!!(泣)


危うく北の大地に散るところでした。
緊急停車して運転手交代です。

「お前はゆっくりと馬を見てろ(怒)」

「そうする。」

・・・某社香港支店の新システムは、こいつの双肩にかかっています。



その後は何事もなく牧場見学終了。

帰途、山道では運転手をS本に交代しました。急なカーブが続くので、運転が上手く何度もこの道を通っているS本に任せるのが無難でしょう。牧場地帯は既に抜けましたから、もう馬も居ないはずです。

半日に渡って馬を堪能しご満悦のS本。すっかり落ち着いて急なカーブの連続もすいすいと運転して行きます。

「ようし、次はヘアピンカーブだ。」

慌ててGに備える我々。S本は落ち着いてハンドルを切り、ヘアピンカーブを曲がって行きます。
何やら口ずさみながら。

「ヘアヘア〜、ピンピン〜」

・・・某社香港支店の新システムは、こいつの双肩にかかっています。



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