「おう、溝口くん。」
「あ、お久しぶりです。」
先日、会社のエレベーターに乗ったら、十年ほど前に私が初めて配属された部署の先輩方と乗り合わせました。私の直属の上司だったKさんに、リーダー格の一人だった女性のAさん、私の教育担当だったFさんといった、当時散々お世話になった方々です。
私は三年程で異動しましたが、その後Kさんは部長に、Aさんは課長に昇格され、Fさんもリーダー格の一人となり、その部署を支えていらっしゃいます。
「相変わらず重そうだねぇ。」
「また一段と太ったんじゃないの?」
「エレベーターが傾かないように真中に乗ってくれよ、溝口。」
「わかってますよ。」
お決まりのからかい文句にお決まりの反応。何年も続けていると、もう親しみのこめられた挨拶代わりのようなもので、特に嫌な気はしません。
エレベーターの中に穏やかな笑みがこぼれます。
それにしても・・・
ちらりとお三方の顔色を伺って、私は嘆息しました。
やっぱり疲れてそうだなぁ・・・
お三方の部署は現在かなり大きなプロジェクトを複数抱え相当お忙しく、年末年始も大勢の方が出勤され開発に当たられていたようです。責任者であるお三方も当然正月返上だったのでしょう。
微笑んだ表情の中にも色濃く疲労が滲んでいます。
「お忙しそうですね。」
私がそう声をかけると、たちまちお三方の顔が曇りました。
「そうなんだ。どうにも人手が足りなくてね。」
「みんな苛立ってるし、だからといって文句を言ってても次々と仕事が押し寄せてくるし。」
「どうだ、お前もウチの部署に戻ってこないか、溝口?」
「そうだな、そうすると助かるな。」
「そうね、また一緒に仕事しましょうよ。」
うーん、地獄のように忙しそうだしなぁ(汗)
そう言って頂けるのはとても名誉なことですが、ご遠慮させて頂きます。(苦笑)
「溝口くんが居るだけで場が和むからなぁ。」
「体重だけで笑いが取れますからね、溝口は。」
「溝口くんの丸い体を見てるだけでこちらの心まで丸くなってくるものね。」
「みんなが苛立ってる今こそ溝口くんみたいに存在するだけで笑える人が必要なんだよな。」
「どうだ、溝口?」
そう言って頂けるのはとても名誉なことですが、ご遠慮させて頂きますっ。(怒滝涙)
そりゃ二度と一緒に仕事したくないと言われるよりは数千倍マシですけどさあ(泣)
<私信>
TF様、まによ様、大変遅くなり申し訳ございません。
次回更新で、いきます!
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