前々回の冒頭で少し書きましたが、現在我が家は引っ越しの準備に追われています。
当り障りのないように表現するなら、近隣一帯が再開発の対象地域となり、我が家を含むご近所全てが引っ越さざるを得なくなったのです。
今までも、私や弟妹達が進学や仕事の関係で引っ越したことはありましたが、実家が引っ越すのは二十五年振りのこと。
しかも両親は店商売をしていますから、生活の場としての家の引っ越しだけでなく、店舗の移動ということも考える必要があります。
さらに、両親もいい加減としなので、色々な場面で私が中心とならざるを得ません。
改めて、社会人として生きることで背負わなければならない様々なしがらみというものを実感しています。
ご近所さんには既に引っ越された方も居り、我が家の南隣で商売をされていた一家も、昨年末、他所に移られました。
年が明けてからはその住居兼店舗の取り壊しが始まり、現在は完全に空き地となっています。
二十年以上も当たり前の存在として目にしてきたお隣りさんが取り壊されてしまうと、さすがに一抹の寂しさを感じますが、かわりに一つだけ良いことがありました。
それは、二階にある私の部屋の日当たりが非常に良くなった、ということです。
私の部屋の窓は、二十五年間ずっとお隣さんの壁に塞がれていたのですが、お隣さんが取り壊されたことで一気に視界が開けたわけです。
お隣さんが完全に取り壊され、工事用に組まれていた足場も撤去されたその日、窓から差し込む柔らかい冬の陽光に、私は初めて自分の部屋が南向きだと気が付きました。
さらに驚いたのはその翌朝。
今までとは違い、朝日が直接窓から差し込んできた為、慣れない明るさにいつもより一時間も早く目が覚めてしまったのです。
一応、窓にカーテンはついているのですが、今までは日が差し込むこともなかったので、寝るときにカーテンを引くという習慣がなかったのです。
こりゃあ、明日からはカーテンを引いて寝るようにしないとな・・・。
洗顔と朝食を済ませ自室に戻った私は、改めて部屋の明るさに驚きました。
まあ、窓から差し込む朝日に起こされるというのもなかなか気分が良いけどね。
引っ越しまでの僅かの間だけれどさ。
さて、会社に行かないと。
私は寝巻きを脱ぎ、さらに下着を取り替えようとシャツとパンツを脱ぎました。
ううっ、さすがに素っ裸になると寒いな。
・・・・・・・?はて、なんか視線を感じる・・・
カーテンを開け放った窓の外、学校や会社に向かう大勢の学生やサラリーマン、OLさん達が、自宅の前の大通りを歩いて来るのが見えました。
ああ、お隣さんが取り壊されて、窓から大通りが見えるようになったんだ。
・・・・・・・・・・。
逆に言えば、大通りからも私の部屋が丸見えになった、ということで。
いやん、えっち。
シャッ! < カーテンを引く音
お願いです、何も見なかった事にして下さい(泣)
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