VOL.32 森音の伴奏

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2011年5月
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VOL.31 春色の到来

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2011年4月
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VOL.30 雪色の地面

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2011年3月
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VOL.29 芦原の輝き

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2011年2月
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VOL.28 雪マークと赤い鳥

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2011年1月
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VOL.27 赤い森と尾羽の彩り

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2010年12月
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VOL.26 秋色とマスカット
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2010年10月
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VOL.25 豊作の知らせ 
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2010年9月
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VOL.24 緑色の海 
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2010年8月
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VOL.23 夏色の輝き 
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2010年8月
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VOL.22 狐の贈り物 
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2010年7月
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VOL.21 若葉色の囀り 
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2010年6月
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VOL.20 花園の鳥 
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2010年5月
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VOL.19 春音の森 
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2010年5月
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VOL.18 ニンジン色と春の干潟 
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2010年3月
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VOL.17 雪の華と小鳥たち 
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2010年2月
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VOL.16 モミジ色の羽 
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2009年11月
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VOL.15 彩りの季節へ 
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2009年10月
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VOL.14 秋色の鳥 
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2009年9月
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VOL.13 空を駆ける鳥 
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2009年9月
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VOL.12 畑の出逢い 
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2009年8月
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VOL.11 神秘の歌声 
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2009年7月
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VOL.10 瑠璃色の輝き 
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2009年6月
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VOL.9 新緑色の小鳥 
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2009年5月
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VOL.8 焼酎一杯グイー 
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2009年5月
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VOL.7 春の歌声
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2009年4月
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VOL.6 手袋は忘れずに
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2009年3月
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VOL.5 春の足音
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2009年3月
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VOL.4 小さなレストラン
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2009年2月
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VOL.3 季節の鳥色
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2009年2月
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VOL.2 冬の森で
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2009年1月
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VOL.1 森の賢者
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2009年1月
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アトリ
写真をクリックすると拡大してご覧いただけます。
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 夏は瑞々しい木々の緑色、そして暑い季節だからか涼しげに感じるスキッリとした青や黄色の鳥が似合う。冬は静かな茶色い風景、寂しげで寒い季節だから、温かな暖色系の赤い鳥が似合う。季節毎に見られる鳥の色も移ろう時の流れに合わせるかのように変わってゆく。そんな自然の中の色を見続けた人間の存在意識の中には、涼しい色は青系、温かな色は赤系とその感じ方が植え付けられているではと思ってしまう。鳥を見て植え付けられたかどうかはわからないけど。

 季節は冬、温かな色の赤い鳥の季節だ。見られる鳥の色は暖かくても、十分に体温を奪われる冷たく強い風が吹き上げる標高1300mの崖の淵に居るのだからもの凄く寒い。風に吹かれて揺れる三脚に手を添えながら眼下にある冬枯れの森を覗いていると、右手にある一本の木に、澄んだ青い空から10数羽程の鳥の一群が降りてきた。ごま塩頭に優しい瞳、蜜柑色の身体で背中にある複雑な模様が美しい暖色系の鳥「アトリ」の小さな群れだ。

 毎年北からやってくるこの鳥は、時に何万羽の大群となることがあるという。残念ながら私はそんな素晴らしい光景を目にしたことはなく、まして昨今は出会うチャンスが少なくなってしまった。しかし今年はなぜかこの鳥を良く目にする。林道を車で進めると所々でこの鳥と出会うことが出来るのだ。アトリは当たり年のようだ。

 「キョキョキョ、ジュイー」と鳴きながら、アトリ達は木の枝で休んでいる。その群れの中から一番距離が近く、枝が邪魔をしていない、そしてなるべく“抜け”の良い背景の中にいるアトリを探してみる。すると目線より少し下の細い枝に一羽の雄を見つけた。距離は近いし枝もない、背景もそこそこ抜けている。早速レンズを構えてファインダーにアトリを入れる。

 レンズ越しの彼は丸いお腹を向けてこちらを覗くようにポーズをとっている。なかなか可愛い、さて撮ろうかとシャッターを押そうとした瞬間、少し強い風が吹いてアトリの止まる枝が大きく揺れた。あっ飛んでしまうかなと思ったとき、お腹を向けていたアトリはバランスをとるように背中をこちらに向けた。今まで丸いお腹で隠れていた背中は深い黒色が作る複雑な模様の羽に覆われていて実に美しい。私は迷うことなくアトリをファインダーの左寄りに置いてシャッターを数度連射させた。

 久しぶりにアトリの柔らかで優しい視線を捉えることができた。そして暖かみのあるアトリの蜜柑色が冬枯れの森に色を加え、冬の寒さがほんの少し和らいでいるように感じた。(平成21年2月記)



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