標高の高い所にも春が届き、山を萌黄色が覆い始めた。朝の光が山を照らし、鮮やかな多種多様な春色で山肌を輝かしている。
その輝きの中を登る、クネクネとした林道沿いでは、賑やかな鳥たちの歌声が響いている。オオルリ、センダイムシクイ、キビタキ、ミソサザイ、カラ達、どの鳥も楽しそうに囀り、森の中は春音で満ちていた。
左に曲がる急なカーブを過ぎると、右手の崖側から聞き慣れた鳥の声が聞こえてきた。ヒッヒッヒッヒ、チュルチュルピーと囀るコルリの声だ。余程道の近くで鳴いているらしくその声は大音量、ついつい誘われブレーキを踏み車を止めた。
車から静かに外に出て、そっと声のする崖下を覗いて見ると、黄色い芽が膨らむ枝の上に、深い紺色をしたコルリの姿を見つけた。大きな口を開けて囀っている。慌て車に戻り、三脚とカメラを引っ張りだし、コルリが動いていないことを祈りなが、再び崖下を覗いた。コルリは同じところで、同じように囀っていた。ちょっと枝が煩いけど、トリミングすれば、それなりの絵になりそうだと思い、シャッターを切った。
5月になり、いよいよ夏鳥の季節到来と喜んでも、いい撮影条件の時期は以外と短く、私のような週末カメラマンには、訪れるチャンスは悲しいかな1シーズンに数回程度。夏鳥の撮影シーズンは瞬く間に過ぎてしまい、再び来シーズンに雪辱を誓うこととなる。5月が全部祝日なら、少しはましな写真が撮れるのに、と嘆いてもしょうがない。良い出会いがあるように祈りながら、毎週末、早朝の高速を駆け、鳥のいる森に向かう、今日こそと思いながら。(平成22年5月記)
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