コンコンコン、森の中からリズミカルな音が聞こえてくる。どこかでキツツキが巣を構えようとしているのだろうか、それとも、朝の食事の最中なのだろうか。これから分け入る森には、その音が響いている。
音の主に出会えたらいいなと歩を進めていると、今度は元気なセンダイムシクイの声が聞こえてきた。頭上の木の枝を、行ったり来たり忙しく跳びながら、囀りを繰り返している。その姿に翻弄されながらレンズを向けていると、視界を大きめの鳥の姿が横切った。鳥が飛んでいった方を見ると、アカゲラが木にしがみついていた。アカゲラは、木をするすると登りながら、時々嘴を幹に叩きつけている。さっきのリズミカルな演奏の主はこのアカゲラなのだろうか。
春が始まったばかりの森の中はまだ肌寒い。だからなのだろう、頭が黒い雌のアカゲラは、可愛らしくちょっと膨れている。ファインダーに入れてみると、背景も柔らかな春の森色、膨れたアカゲラは可愛いいし、こういう画はなかなか好きだ。なので、パシャパシャと連写してみた。するとなんとシャッターに合わせて、アカゲラもコンコンコン、まるで伴奏のようにドラミングを奏でてくれた。ほんの少しの間、森の中にはアカゲラのドラミングと、シャッター音がこだました。
暫くすると、アカゲラは次々に木を渡り森の奥へ行ってしまった。今回は、アカゲラとのデュオだったが、次回は雄雌とのトリオ、オオアカゲラが参加してのカルテット、小鳥たちのコーラス入りなら文句は無いなぁ。そんな素敵なことがあったらきっと楽しいに違いないだろう、と思いながら森の奥に消えたアカゲラを見送った。(平成23年5月記)
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