時々チラリと舞う雪が見られる割に風がないので今日は比較的暖かい。春が近づいて来たからか、穏やかに過ごせる日がたまにやってくる。だからだろうか、眼下に広がる森の色が赤味を帯びてきたように見える。新芽がゆっくりと大きくなり、その色が森に加わったのだろう。
標高の高いこの森で見られる鳥の種類も少しづつ変わっているようだ。少し前に良く見られていた鳥の姿は少なくなり、平地で見られた鳥の声が聞こえている。暖かくなり山の上に戻り始めたのだろう、そう言えば、シジュウカラやヤマガラなどのカラ類の囀る声が、森に響きはじめた。春が麓から、山の上にもやって来ているようだ。
「フィーフィーフィーフィー」と遠くの方から澄んだ鳥の声が聞こえる。春が近づくと良く耳にするこの声の主は、木の幹を上から下に降りる特技を持つ「ゴジュウカラ」だ。耳を澄ますと、あっちからもこちっからも聞こえてくる、きっと何処かの木の梢で、互いに自分の場所を主張しているのだろう。
その声に包まれながら林道を歩いていると、木の幹を下から上に移動している鳥を見つけた。先ほどの声の主「ゴジュウカラ」だ。ちょこちょこと木の幹を、器用に回りながら下に降りて来ている。
早速レンズを向けて、ゴジュウカラをファインダーに入れその姿を追うのだが、木の裏から現れては、また直ぐに木の裏に隠れてしまいなかなかシャッターが押せない。それならと、ゴジュウカラの動きを予想して、レンズを少し先回りさせ、その姿が現れるの待ってみるのだか、予想とは反して逆の方から現れ、やっぱりシャッターが押せない。そんなことを繰り返していると、一度だけ予想が当たりレンズを向けた方向からゴジュウカラが出て来た。さらに何かに気になったのか、その場でほんの1秒程立ち止まり、逆さのままこちらに顔を向けた。シャッターチャンス到来。
暖かい日と寒い日をもう何度か繰り返せば、本格的な春がやって来る、そして息を吹き返した森は、淡い萌葱色に染まる季節を迎える。その頃また訪ねてみよう。今度は新緑が芽吹いた枝の上で囀る、鳥の姿を探しに。(平成21年3月記)
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