鷹を見送った峠を下り、山麓の草原を訪ねた。草原は、所々に次の季節を感じさせる彩りが見られ静かな季節を向かえていた。
草原から森に続く道の側に、ヒメジョオンが咲いている花畑のような草原を見つけた。咲く花はもうすぐおしまいなのか、秋色に変わり草原は薄茶色に染まっていた。その中に花を落とした待宵草が幾つもニョキっと立っていた。この上に鳥の姿があったならと辺りを見回すと、草原の真ん中辺りに小鳥の姿を見つけた。風に吹かれゆらゆらするその上にたたずんでいるのは、シックな秋色に衣替えしたノビタキだった。顔の辺りが黒い歌舞伎メイクをした雄で、きょとんとした表情が可愛らしい。
季節の色と同じ茶色い姿に変わった雄のノビタキ。夏の羽色からここまで変わるのは、小鳥の中では珍しいように思える。雌の羽色がそれほど変わらないので、越冬先は、この茶色い姿が役にたつ秋色の草原に似たところなのかもしれない。
夕暮れが迫り、山が夕陽に染まりはじめた。ノビタキは、今も待宵草の上にたたずんでいる。風は冷たくなり、久しぶりに寒さを感じる。今日は家に帰ったら何か温かいものを口にしよう。どこかもの悲しくなった秋の草原に別れを告げ家路を急いだ。。(平成21年9月記)
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