静かな休日の朝の里山は、空気が少し涼しく感じた。秋が山から降り始めてきたのだろう。でも秋の色付きはこれからで、まだまだ緑の葉が茂り陽射しは夏を想わせる程強い。持病の腰痛でレンズを担ぐのが少し辛いので双眼鏡を片手にブラブラと歩き始めると、車を停めたところから然程遠くない、てっぺんに氏神を祭る社がある丘のエゴの木で「ニィニィ」と鳴くヤマガラの姿を見つけた。
エゴの木には、大きく丸いマスカットを想わせるような実がぶら下がっている。その実を目当てにヤマガラがやって来ているようだ。
エゴの木にやってくるヤマガラの様子を暫く見ていると、ほとんどの枝に同じように丸い実が並んでいるのに、ヤマガラは決まったように何ケ所かの枝の実だけを採っていく。そこが採りやすいのか、それともそこの実が美味しいのか、私には見分けがつかないが、同じところにやって来るのだ。これなら、ヤマガラが来そうな枝にレンズを向けて待てば可愛い姿が写せるかもしれない。
連れ合いに手伝ってもらい、木の側にカメラをセットし待っていると、ニィニィと鳴きながら、さっき様子を見ていた時の枝にヤマガラはやってきた。やっぱりなと思いながら、向いていたレンズをヤマガラに合わせてシャッターを切るのだけれど、その動きはとても素早い。あっという間に実を加えて飛んで行ってしまう。エゴの実に片足でぶら下がる姿などは、とても撮りたい絵なのに、撮る隙を与えてくれないし、たとえ捉えても、ぶら下がった姿はユラユラ揺れてブレてしまう。同じ枝に来るからといって、簡単にはいかない。私には枝の上で実を見つめる姿を写すのがやっとだった。
エゴの木でヤマガラの声が聞こえなくなると、里山の秋は深まり彩りの季節を向かえる。そうしたら秋色の枝の上の、ヤマガラを撮ってみたい。今度の週末は何処かに良い場所がないか、里山を歩き探してみよう。秋色のヤマガラに似合いの風景を。(平成22年10月記)
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