冬を迎えた高原は、強い風が吹いていた。おかげで鳥達は藪や森の奥に姿を隠してしまい、朝の探鳥は退屈なものだった。
風は強いが、気温はマイナスに至らず、もう12月と言うのに辺りには雪の欠片も見られない。この高原も、どこかが少しずつ変わってきているのだろうか。
風を避けるために逃げ込んだ、森を貫く林道の脇に車を止め、携帯ガスストーブでお湯を沸かし、大きめのカップにたっぷり紅茶を入れた。普段より暖かいとはいえ、冬の高原の寒さは身に染みる。温かな飲み物はとてもありがたい。カップの紅茶をすすりながら林道を回ってみたものの、やはり鳥影は薄く、ツグミとカラの混群が見られた位だった。
鳥の少ない林道を抜け、再び草原に車を進めた。右手の低いカラマツに20羽程の鳥の群れが止まっている、ムクドリかツグミの群れだろうと横目で見ながら通り過ぎようとしたとき、冠羽が起きているのが目に入った。よく見ると尾羽の先端が赤いヒレンジャクだった。南へ下る途中に高原へ立ち寄ったのだろう。
車を止めて眺めていると、ヒレンジャクは草原にある野バラの赤い実を食べているようで、時々カラマツから降りてきた。降り立ったヒレンジャクの背景には、芽吹きの準備を始めた森が赤く色づき、尾羽の赤い彩りを際立たせている。私は赤い彩りに惹かれるようにシャッターを押した。
夕方になり山から雲が湧きはじめた。気温はあっという間に下がり零度を下回る。チラホラと白いものが空から舞い降りてきた。来週はやっと真っ白な高原になりそうだ。待ちに待った銀世界での撮影がはじめられるだろう。(平成22年12月記)
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