たくさんの囀りが聞こえるのだが、深い森の中を縫うように走る林道沿いの探鳥は成果がなく、距離のあるカラマツの先端で囀りを聞かせるオオルリに翻弄されるばかりだった。諦めて森を抜け、春が来たばかりの高原へ車を走らせた。
高原はすでに十分な準備を済ませ、遅い春を受け入れ、草原を緑一色に染め、ハルザキヤマガラシがそこかしこに、黄色い花を咲かせていた。今日の高原の主役はと言うと、モズのようで、あちこちの草原でその姿が見られた。
その草原を巡る内、一面ハルザキヤマガラシの花が咲くところを見つけた。何か鳥がいないかと見回すと、黄色の花園に立つズミの木の枝に雌のモズを見つけた。モズは花園を注意深く見つめている。おっ、これなら黄色の花園の中にいるモズが撮れるかもと思ったその時、モズが花園に向かって飛び降りた。やった!と思うのもつかの間、覗いたファインダーの中にモズの姿はなかった。モズはすっぽりと黄色い花に埋まりその姿を隠してしまい頭すら見えない。暫くするとモズは飛び立ちズミの枝に戻ってしまい、同じように黄色の花園を見つはじめた。あーぁ。
仕方なくファインダーにモズの姿を入れた。モズの止まる枝には新緑が芽吹いている、そして、赤いズミの蕾がモズを囲んでいた。黄色の花園程派手ではないが、なかなか綺麗じゃないか。私はシャッターを押し蕾の中の雌モズを記録した。
もうすぐ、ズミの蕾は開き枝に白い花を咲かせる、白い花の中のモズもいいなぁと思いながら、夕闇が迫る高原を後に家路についた。車のバックミラーに映る山が金色に輝いていた。(平成22年5月記)
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