私にとって、コゲラの頭の小さな赤い羽根は、ちょっとした憧れだ。見ただけでも、ほんの少し得をした気分になれる。おみくじで、小吉を引いたような感じだろうか。
季節は晩秋、彩りが山から里へ駈け降りてきた。モミジは紅く、欅は蜜柑色、銀杏も黄色に染まり、里山が秋色に輝きだした。その里山に点在するもみじを、川上から川下へかけて巡ってみた。色付いた枝の可愛い小鳥の姿を写しとるためにだ。どんな鳥でも文句はないのだが、今日はシジュウカラさえにも出会えず、ファインダーには鳥の居ないもみじの枝が写しだされるばかり。いくつかの心当たりを巡ったが、何処も鳥の姿は見つけられなかった。
仕方なく家の近所の川原の堤防を歩いていると、冬色になった川原からコゲラの声が聞こえてきた。立ち枯れた木の枝をドラミングしている。双眼鏡で覗くと頭に赤い小さな羽が見えた。ラッキー「小吉」獲得だ。
ゴゲラはひとしきり枯れ枝を叩くと満足したのか、私のいる堤防を飛び越えて、川とは反対の山の方に飛び立った。行く先に目を向けると、そこにはピンク色の実を付けたマユミの木があった。コゲラはマユミに飛び付くと上の方にある実に向かって落ち着きなく幹を登った。
背負っていたカメラを立てて、レンズをコゲラに向けた。その姿を追うと頭にある赤い羽根が見え隠れしている。これを撮れたらいいなぁと思っていると、コゲラはどれを食べようか迷ったような表情を浮かべて一瞬足を止めた。赤い羽が、チラリと見えたので、逃さずシャッターを切った。モニターにはモミジ色の小さな羽根が写っていた。大したことのない写真たが、何と言っても赤い羽が写っている、なので私の気分は「大吉」獲得である。(平成21年11月記)
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